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犬の多中心型リンパ腫
【多中心型リンパ腫】 リンパ腫とは白血球の一つであるリンパ球が腫瘍性に増殖する、血液のがんです。
その中でも多中心型リンパ腫は、身体中のリンパ節が腫瘍化して腫れてくる病気です。
リンパ腫の中で犬では最も発生が多く、約80%で見られる型です。他には消化器型や皮膚型などがあります。
レトリーバーやセントバーナード、ボクサー、バセットハウンドなどが好発犬種とされています。
中高齢での発症が多いですが、その他の犬種や若齢での発症も認められます。
【症状】 多中心型リンパ腫の症状の一つにリンパ節の腫大があります。
全身の組織で発生する可能性がありますが、体表リンパ節が最もわかりやすく、発見のきっかけになることが多いです。
初期にはリンパ節の腫れだけで、ほかに症状がないこともあります。病気が進行すると以下の症状が見られます。

・リンパ節の腫れ
・元気消失
・食欲不振
・体重減少
・発熱
・目の充血など
体表リンパ節
【検査】 身体検査で体表リンパ節の形や大きさ周辺の組織との関連性などを調べます。全身状態の評価やリンパ腫の進行度を調べるため、血液検査やレントゲン検査、超音波検査も行います。これらの検査で異常が認められたリンパ節や臓器は・細胞診や病理検査を行います。
リンパ腫では細胞診によって診断が確定することが多くあります。正常なリンパ節では見られない大型のリンパ球が、リンパ球全体の50%を超えるとリンパ腫と診断します。
リンパ球の種類により抗がん剤の効き方が異なるため、治療方針や予後(治療後の経過)の予想のためクローナリティ検査(遺伝子検査)によってリンパ球の種類も調べます。
犬の多中心型リンパ腫
【リンパ腫のステージング】 リンパ腫のステージングは以下のように分類されています。
〇ステージⅠ 単一のリンパ節または単一臓器のリンパ系組織に限局
〇ステージⅡ領域内に複数のリンパ節病変を認める
〇ステージⅢ全身のリンパ節に病変を認める
〇ステージⅣ肝臓または脾臓に病変がある
〇ステージⅤ血液及び骨髄への腫瘍細胞出現、他の臓器にも病変が認められる
サブステージa 症状がない
サブステージb 症状がある

ステージによって予後は変わらず、症状の有無により予後が変わるとされています。

【治療】
リンパ腫の治療では、完治ではなく延命・緩和が目的となっています。抗がん剤でリンパ腫による影響を抑えていくことで、生活の質を保ちます。
リンパ腫では、抗がん剤を用いた化学療法が最も効果的であるとされています。リンパ腫の種類や動物の状態等をふまえて、複数の抗がん剤を定期的に投与し計画的に治療を行っていきます。


犬の多中心型リンパ腫は抗がん剤の効きが良いことが多く、早期に治療することで生存期間を大幅に伸ばすことが可能です。
早期に発見し早期に治療を開始するためにも、体にしこりなどを発見した際は受診をお勧めします。変化にいち早く気付けるよう、日ごろからおうちのわんちゃんの体を触ってあげましょう。
そのほか体調不良など、わんちゃんの様子がいつもと違うなと感じましたらお気軽にご相談ください。
執筆担当:獣医師 人見なな