殺鼠剤(ワルファリン)中毒
〇殺鼠剤(ワルファリン)中毒とは
ワルファリンとは主に殺鼠剤に含まれる成分で、動物が摂取するとビタミンKの利用障害による出血傾向を起こします。
主な症状として元気消失、歯肉出血、皮下出血、鼻血、吐血等が挙げられます。重症例では肺出血による呼吸困難、脳内出血による神経症状、大量出血によるショックを引き起こすこともあります。
殺鼠剤は主に農薬として用いられること多いのですが、ネズミの多い繁華街で使用されていることもあるため注意が必要です。ピンク色のものが多いことも特徴です。
〇治療
出血傾向への対策としてビタミンK製剤の投与を行います。ビタミンK製剤としてはビタミンK1(フィトナジオン)製剤及び、ビタミン K2(メナテトレノン)製剤があり、それぞれ注射薬と内服薬があります。誤食から時間が経っていない場合には催吐処置を行うこともあります。すでに中毒症状を発症し重度の貧血、肺への出血等により生命の危険が認められる場合には輸血を検討します。
〇症例
ダルメシアン 9ヶ月齢 避妊雌
散歩中にネズミ取りを誤食してしまったことを主訴に来院しました。初期治療として催吐処置を行い、出てきた異物がピンク色であったことからワルファリンを含む殺鼠剤の可能性を疑いました。中毒を疑う症状は認められませんでしたが、予防的にビタミンK2製剤の投与を行い、出血傾向の確認のため血液検査を行いました。幸い血液検査では出血傾向は認められず、お帰り頂いた後も症状はなく大事になることはありませんでした。
翌日もう一度出血傾向がないか確認させていただきましたが、問題ありませんでした。
〇まとめ
本症例では幸い何事もなく終わりましたが、殺鼠剤中毒は命に関わることもある危険な病気です。道端に落ちているケースも多いため、お散歩の際にはお気を付け下さい。また、疑わしい物を誤食してしまった場合にはすぐに動物病院にかかることをお勧め致します。
執筆担当:獣医師 日野義嗣
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