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苦手な方はご注意ください。

大型犬のウォブラー症候群(頚部脊椎脊髄症/脊椎すべり症/CCSM)
犬のウォブラー症候群とは、脊椎と呼ばれる首の骨の不安定性や椎間板および先天的な骨形態によって脊髄圧迫を引き起こし、頸部痛、運動失調、四肢不全麻痺などの臨床神経症状を伴う病気のことです。初期症状の多くは頸部痛と後肢のふらつきです。首の病変ですが、後肢の麻痺から始まるのが特徴で、首を動かすのをためらい、頭をまっすぐにしたまま低い位置に保とうとします。また、歩行時に爪をこする音が聞こえ、地面と擦れて削れることで、爪から出血するケースもあります。ナックリングと呼ばれる、手のひらをひっくり返した状態のまま起立していることもあります。進行すると前肢にも麻痺が広がり、ふらつきや起立困難となるケースもあります。
主に大型犬の尾側頚椎が好発部位ですが、骨形態によるものでは、吻側(前の方)に起きるケースや、多数の部位に圧迫がある多発性のタイプもあります。また、近年ではヨークシャーテリアなどの小型犬にも似たような病態があることが分かってきています。
今回ご紹介するのは1歳のバーニーズマウンテンドッグ45kgです。術前の歩様です。腰のふらつきが強く、アスファルトでは爪が擦れる音が聞こえています。
術前検査として単純X線画像検査、造影X線画像検査、MRI検査、CT画像検査を実施し、頚部2-3,3-4,5-6,6-7の部位に脊髄の狭窄が認められました。
造影X線画像検査です。矢印の部位では首を曲げたときに圧迫が確認されました。
MRI画像検査です。頚椎2−3の圧迫が確認されました。
頚椎3−4での圧迫が確認されました。
椎体中央部の正常な脊髄です。脊髄周囲には脳脊髄液があり、狭窄がないのがわかります。
X線CT画像検査です。特に頚椎2−3領域で左右からの重度の圧迫が確認されました。椎間板の問題ではなく、骨自体の形・形態異常からくるものと判断しました。
かなり多数の病変が有り、責任病変がわかりにくかったこと、手術自体かなり難易度が高くなることが予想されたため、3Dプリンタにて骨モデルを作成し術前計画を綿密に練ることとしました。
頚椎の空洞に骨が飛び出ているのがわかります。
頚椎全体の3Dプリンター骨模型です。
今回使用する予定のチタン製プレートSOPと呼ばれるものです。動物で使う最大のサイズ3.5mmです。術後にMRIが必要になったときのために、通常のステンレスではなく、チタンを用いています。
手術では計画を立てた位置で骨の切削を行い、減圧を実施し、同時に不安定性を解消するためにプレートによる固定を実施しました。骨の切削に4時間、固定に3時間かかり、すべてで8時間ほどの長時間の手術となりました。今回は責任病変が前方の2-3-4であろうと判断し、そこをメインに手術を実施しました。術後すぐの歩様動画です。術後はコルセットを装着しています。まだふらつきが残っている状態です。

術後3ヶ月健診の際の歩様です。 術後はドミノ現象といって、固定した前後で再発するケースが有るため、しばらくは注意が必要です。
今回のように難易度が高い手術では術前計画が非常に重要です。X線、CT,MRI,3Dプリンターなどを駆使して手術計画を練ったことが成功につながったと考えています。
術後のX線画像検査です。
ウォブラー症候群は診断も容易ではなく、治療も難易度が高いケースが多いです。爪が削れて出血している、あるきかたがおかしい、ふらつくなどの症状でお悩みの方はご相談ください。

執筆担当:獣医師 磯野
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