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脳炎(髄膜脳脊髄炎)について
脳に起こる炎症性疾患を総称して“脳炎”と呼びます。

脳炎の症状は発生部位によって様々ですが、てんかん発作・運動失調・歩行障害・旋回・ローリング・失明などが見つかるきっかけになることが多いです。脳炎は症状の進行が他の疾患に比べ急速(数時間〜数日単位)であることが多く、早期診断と早期の適切な治療が非常に重要です。
当センターでは脳神経科獣医師が下記の検査を行い判断・説明をさせていただくため、その日のうちに治療を開始できます。

脳炎を疑う場合はMRI検査および脳脊髄液検査を行い、年齢や犬種なども含めた総合的判断のもと診断します。 中には腫瘍など他疾患との区別が困難なケースもあり、その場合は内科治療開始後に再度同様の検査をしたり、外科的生検を行う必要があります。

脳炎は原因によって以下のように分類されます。
①非感染性(特発性・免疫介在性)
犬において特に多くみられるタイプであり、非感染性脳炎の大部分は“起源不明の髄膜脳脊髄炎(MUO:meningoencephalomyelititis of unknown origin)”です。MUOには以下の脳炎のタイプが存在します。
 ・肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)
 ・壊死性髄膜脳炎(NME)(以前はパグ脳炎とも言われていました)
 ・壊死性白質脳炎(NLE)
 ・好酸球性脳脊髄炎
 ・特発性震戦症候群
MUOの発生原因は未だ完全には解明されておりませんが、比較的若いうちに発症すること、好発犬種が存在すること、および免疫抑制治療により一時的な改善・寛解が得られることから、遺伝性の自己免疫性疾患であると考えられています。
治療はステロイド製剤(脳の腫れを引かせる、免疫を抑制し炎症を鎮める目的で使用)と免疫抑制剤(シクロスポリン・シトシンアラビノシド・ミコフェノール酸モフェチルレフルノミドなど)による内科的治療を行いますが、MUOは発症原因・機序が不明であることから、残念ながら現時点で根本的な治療法は存在しません。また、GMEでは放射線治療が選択されることもあります。
②感染性
猫に比較的多く認められるタイプです。感染性脳炎の原因となる病原体には、種々の細菌、真菌(トキソプラズマやクリプトコッカスなど)、ウイルス(犬ジステンパーウイルス、猫伝染性腹膜炎ウイルスなど)などが存在します。抗生剤や抗真菌薬による内科的治療が主体ですが、膿瘍を形成しているケースなどでは外科的な除去・洗浄が必要なケースもあります。いずれの年齢・犬種でも発生する可能性があります。
③二次性(続発性)
他の脳疾患や周囲の炎症に続発して起こるものが含まれます。このケースでは原因疾患の診断治療が重要となりますが、対症療法としてステロイド製剤を用いることがあります。いずれの年齢・犬種でも発生する可能性があります。
壊死性白質脳炎を疑った症例のMRI画像 脳脊髄炎では多発性に病変が出ることが多い(炎症部位:ピンク矢印)
特発性頚髄炎と診断した症例 MRIで頚髄の広範囲に病変がみられた、脳脊髄液中に多数の炎症性細胞出現あり(ステロイド製剤と免疫抑制剤により寛解した)
頚髄髄膜炎と診断した症例 炎症によって髄膜が肥厚し血流増加するため髄膜が明瞭に造影される
二次性の髄膜脳炎を起こした症例 内耳炎から骨を越えて脳に波及した
当センター脳神経科では多くの脳炎治療実績(2021年 年間新規診断数20件)があります。 治療薬の選択は緊急性・それぞれの副作用・飼い主様の投薬のしやすさなどを考慮して、その子その子に合わせた方法をご相談させていただきながら決定いたします。



文責:獣医師 大竹
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