※手術の写真を掲載しておりますので、
苦手な方はご注意ください。

肘頭骨折に対する髄内ピンとテンションバンドワイヤー法による固定
肘頭とは尺骨の出っ張っている部分、人で言うまさに肘の部分です。尺骨の肘頭は上腕三頭筋が付着する部分であり、肘を伸ばすときに力がかかる部分です。そこが折れてしまうと筋肉が縮んでも骨に力が伝わらず、むしろ肘を動かすたびに骨折部位がグラグラするため痛みが持続します。
今回紹介するのは30cmほどの高さから降りたときに着地に失敗し、そこから前足を痛がっているという8ヶ月の柴犬です。すぐに近くの病院に行き痛み止めを処方されたのですが、3週間経っても良くならない、足を痛がっているとのことで来院されました。レントゲン画像検査では左の肘頭の骨折、3週間経っているのに骨がくっついていない(通常この年齢であれば3週間経つと骨が着きだします)ため、癒合不全と呼ばれる状態と判断しました(偽関節)。癒合不全は骨がくっつくことを諦めてしまい、そのまま骨が萎縮していってしまうことを言います。放っておくと骨が肉芽線維に置換され足を着けなくなってしまう子もいます(ひどいと断脚することもあります。。。)。
矢印の部分が骨折線です。通常であれば架け橋のような骨が出てくる時期ですが、それが全くありません。おそらく骨折部位が常にグラグラとしているため骨が生着する余裕がないためです。
そこで、すぐに動物医療センター元麻布で手術を行いました。まずは骨折部位を出し、無駄な肉芽や腐骨(役に立たない仮骨)を除去し、髄腔に穴を開けます。骨折部位がきれいになったところで、骨に太めのピンを刺入し固定します(髄内ピン)。それだけでは前後左右の動きを制御できないため、テンションバンドワイヤーと呼ばれるワイヤーによってがっちりと固定を行います。また、海綿骨移植が必須となるため、上腕骨から採取し、移植を行います。
骨折線の周りに肉芽がたくさん出てきており、骨折部位の中にも肉が入り込んでしまっています。こうなると骨の癒合は進みません。
髄内ピンを逆行性に入れているところです。コリブリというドリルを使用しています。
髄内ピンを入れたところです。この状態でCアームというX線照射機を用いて正しく刺入されているかを確認します。大丈夫であれば海綿骨を移植して終了となります。
手術風景です。磯野が執刀で、助手、麻酔医、器具助手岩崎(最手前)、外回りと、人数が必要となります。
術後のレントゲン画像です。骨折線があい、向きが揃っているのがわかります。しかし、受傷から時間が経っているため骨折線をピッタリと合わせることは困難です。
術後は1ヶ月半〜2ヶ月くらいで抜ピンとなります。また、関節をまたいだ骨折であったため、長期的にみると関節炎が進行していく可能性があるため、長い経過観察が必要となります。
足を痛がるときにはすぐに病院へ連れて行くようにしましょう。また、良くならないときには詳しい検査が必要となることが多いので、獣医師と相談するようにしましょう。

執筆担当:獣医師 磯野
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