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苦手な方はご注意ください。

犬の巨大膀胱結石
膀胱結石とは、尿中のミネラルが結晶化し、膀胱内で石のような形へと変化したものです。まず尿中のミネラルが過飽和(それ以上溶けない状態)を起こし結晶尿となります。結晶尿が排泄されないと、結晶が凝集し、結石となります。大きさは様々で、大きな結石が一つだけ形成される場合もあれば、砂のような細かな結石がたくさん形成される場合もあります。膀胱結石の原因には様々な要因が考えられますが、食事や細菌感染が結石の原因となることもあります。

膀胱結石の症状
最も一般的な症状は、血尿と排尿障害(排尿姿勢をとっているのに尿が出ていない状態)です。血尿は結石が膀胱壁をこすることで組織が傷害され、出血することにより起こります。排尿障害は、膀胱壁や尿道が炎症を起こし、肥厚したり、結石が物理的に排尿を障害したりする結果生じると考えられます。結石が完全に詰まってしまった場合は尿を排泄できなくなり、膀胱が破裂してしまう可能性もあります。

診断方法
膀胱結石の診断は、病歴や臨床症状、腹壁の触診、レントゲン検査、超音波検査などを組み合わせて行います。

治療法
大きく分けて2種類の方法があります。1外科療法、2内科療法です。どの治療が選択されるかは動物の状態や結石の種類により変わります。
外科療法
膀胱を切開して尿石を摘出する手術です。お腹を開けて膀胱を体外に露出させる、一般的な方法の他に、腹腔鏡を用い、体内で一連の手術を行う方法もあります。外科療法を行うことで、膀胱や尿道を傷害している結石を完全に取り除くことが可能なため、根治が望めます。
内科療法(カテーテルによる閉塞解除、食事療法)
カテーテルによる閉塞解除
結石を水圧により除去する、あるいは膀胱内に押し戻す非外科的治療法です。膀胱からカテーテルを挿入し、水をフラッシュすることで詰まりを解除します。砂のように大変小さい結石の場合は、この治療法により結石を取り除ける可能性はありますが、ある程度大きな結石や、結石の数が多い場合は、結石自体を取り除くことはできないため、対症療法としては有効ですが根本的な治療にはなり得ません。
食事療法
結石の種類によっては食事により溶解が見込めるものもあります。外科手術を行う必要が無く、動物によっては有効である場合があります。しかし、完全に溶解するには時間がかかるため、緊急性の高い場合は外科療法が選択されます。

これまで犬猫の膀胱結石について簡単に説明しましたが、当院で実際に治療した膀胱結石の症例について、経過や治療方法についてご紹介したいと思います。

12歳、女の子のわんちゃんです。血尿と嘔吐、排尿姿勢をとるものの尿が出てこない、を主訴に来院されました。各種検査を行いましたが、レントゲン検査により、膀胱内に結石が複数個確認されました。下のレントゲン画像に示すとおり、膀胱の中に1cm程度の白い構造物が見えます。
その際は内科療法により良化しました。しかし、10ヶ月後に、4日間ご飯を食べず尿をそこら中でしてしまうという主訴で再び来院しました。レントゲン検査の結果、2cm程度の結石が確認されました。下の画像がレントゲン画像になります。以前は1cmだった結石が、たった10ヶ月の間に2倍の大きさになっていました。結石が大きくなる時間は結晶の種類や尿の性状などにより様々ですが、このように急速に大きくなり、激しい症状を出してしまう場合もあります。この子は膀胱切開術の手術により膀胱内の結石を摘出し、治療した結果完治しました。下に示す写真は結石摘出前後のレントゲン画像と、摘出した結石の一つです(残りは結石分析に提出しました)。
結石分析の結果、摘出した結石はストルバイト結石であることが明らかになりました。ストルバイトは食事療法で溶解する可能性があるため、ご飯を結石用フードに変更し、さらにサプリを行い、結石のコントロールを行っています。

今回は通常通りの開腹手術による膀胱切開で結石を摘出しましたが、サイズがここまで大きくない場合には腹腔鏡手術(ラパロ手術)によって摘出することも可能です。ラパロ手術の場合早ければ1泊2日で帰宅することも可能です。ラパロ手術による膀胱結石摘出に関してはまた後日ご報告したいと思います。
膀胱結石は、原因も様々であり、比較的発生頻度の高い疾患です。わんちゃん猫ちゃんの些細な変化を見逃さず、気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

執筆担当:獣医師 松村
動物医療センター元麻布トップページ
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TEL03-6384-5351