腹腔鏡手術
腹腔鏡(ラパロ)とは、体表の皮膚から腹腔内に挿入する内視鏡の器具のことで、この内視鏡器具を使って行う手術を腹腔鏡手術といいます。腹腔鏡手術では、約1㎝のポートと呼ばれる穴を3カ所開け、1ヵ所は内部を観察するため内視鏡カメラを挿入し、残り2ヵ所に鉗子や電気メスを挿入して腹腔内で操作をしながら手術を行います。猫の避妊などでは2ヵ所の穴で行うことも可能です。
開腹手術に比べて低侵襲であるため疼痛の軽減が期待され、術創が小さいのが特徴の1つです。また、内視鏡カメラで腹腔内の観察が可能であるため他臓器の異常を確認することもできます。
腹腔鏡手術の適応疾患には以下のものがあげられます。
・卵巣・子宮摘出(いわゆる犬、猫の避妊手術)
・卵巣摘出のみ(いわゆる犬、猫の避妊手術)
・腹腔内の停留精巣
・膀胱結石の摘出
・胆嚢摘出
・胃腹壁固定
・子宮粘液症、子宮蓄膿症
・肝臓生検
こちらは避妊手術の様子です。
避妊手術後の術創です。開腹手術よりも切開倉が小さいのがわかります。
主に避妊手術の場合、術創が小さく低侵襲であるのに加え開腹していないため手術当日に退院ができるメリットもあります。麻酔の覚醒や麻酔後の体調によっては飼い主様との相談で1泊することもあります。
こちらは腹腔鏡を用いた肝生検の様子です。
1枚目の写真は脾臓を示していて、腹腔鏡を用いることで肝臓以外の胆嚢や脾臓など周辺の臓器の確認、出血の程度なども観察しながら手術を行うことが可能です。
腹腔鏡の特徴として、視野を確保するために腹腔内に炭酸ガスを注入して気腹という作業を行います。胸部が圧迫されるため、心臓疾患、肺疾患などの循環や換気に不安がある症例には注意が必要です。
最後に、痛みが少ない手術ではありますが'ゼロ'ではないので個体によっては痛みが生じる場合があることもご理解していただく必要があります。また、開腹手術と同様全身麻酔下で行うため麻酔のリスクにおいても周知いただければと思います。
どんな手術でもお腹を開けることに抵抗を感じている方は多くいらっしゃると思います。また、手術となると不安や疑問をお持ちかと思います。気になることや詳細などなにかありましたらお気楽にご相談ください。執筆担当:獣医師 尹
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