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門脈体循環シャントとCT画像検査
門脈体循環シャントとは、本来消化管と肝臓をつなぐ門脈と呼ばれる血管が後大静脈や奇静脈など体を循環する血管との間に異常な血管が形成される状態を指します。
肝臓には、消化管から吸収された栄養と毒素の処理を行う機能があります。しかし、門脈に肝臓を迂回して、消化管で吸収された栄養や毒素が直接全身に循環してしまうことで、肝臓に栄養を送ったり毒素の代謝などができなくなってしまいます。それによって、消化器症状や神経症状、発育不良などの症状が見られます。
 今回ご紹介するのは、避妊手術の術前検査で偶発的に門脈体循環シャントが認められた症例です。症例は、チワワの1歳で術前の血液検査でアンモニアと肝臓の数値に異常が認められました。そのため、肝機能の評価を行うため、総胆汁酸(TBA)とアンモニアの計測、超音波検査を行いました。
食前と食後のアンモニアとTBAの数値です。 食前、食後ともにTBAが高値であり超音波検査において後大動脈、後大静脈、門脈の他にもう1本異常な血管が確認され、血流の乱流も確認されました。
以上の検査より、門脈体循環シャントを疑いCT画像検査を行いました。
 門脈体循環シャントの確定診断は、CT画像検査による造影が必須となります。門脈を造影することで異常な血管を検出することが可能です。
CT画像検査を示します。黄色で示す部分が短絡した異常な血管になります。
CTにおいて、左胃と後大静脈でのシャントが確認できました。
このようにCT画像撮影は、短絡血管の位置を確認するだけでなく手術の計画をたてる上でも非常に重要となります。
門脈体循環シャントの治療は、外科治療が根本治療となります。術式にはいくつかありますが、今回は結紮術を用いて行いました。門脈圧の急激な上昇を防ぐため、術中の門脈圧によっては2回に分けて結紮を行う場合もあります。
2回で行う場合には、CT画像検査で手術の計画を立て1回目の手術で簡易的に結紮を行った後、門脈圧の上昇による神経症状などのモニタリングを行い、再度CT画像検査を行なって短絡血管の状態を確認した上で2回目の手術で完全結紮を行うという流れです。CT画像検査できちんと位置を確認をして手術を行うことで手術時間の短縮による麻酔時間の短縮、さらに正確なアプローチができるという大きなメリットがあります。
こちらが1回目の術後のCT画像検査です。 前回のCT画像検査と比べるとシャント血管が細くなっているのがわかります。
1回目の術後のTBA測定の結果と2回目の術後1ヶ月経過してからの検査結果です。 徐々に基準値範囲まで下がってきてくれて、一般状態も良好であり治療終了となりました。
今回の症例のように健康診断や術前検査などで異常を発見できたことにより早期に治療介入ができるケースは多くあります。また、当院のように診断から治療までを行うことのできる施設も多くないと思います。
当院では、最高の医療を届けるために尽くしていますので、いつでもご相談ください。

執筆担当:獣医師 尹
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